Geminiに要求定義スキルを徹底的に鍛えてもらった話(1)

鬼指導を受けている図 個人開発

これからの時代,コーディングは全部AIがやってくれる時代になります.

これにより,開発言語やバージョン等の環境に依存する部分を人間がする必要が無くなります.

したがって,これからはすべての人がチームリーダーになります.AIという優秀なコーダーに的確に指示して,目的のプログラムを得る.そのためには要求定義・要件定義スキルソフトウェアテストスキルが大変重要となると考えています.

要求定義・要件定義は,プログラミング言語やアルゴリズムの学習と違い,ひたすらパソコンカタカタしていれば身に突くようなスキルではありません.こういった「覚えゲー」こそAIの得意分野であり,エンジニアはもっと生産的な活動のみに集中するべきであると思います.

したがって要求定義・要件定義スキルを学ぶことにしました.これら根幹は人との対話なので,本気で学ぼうと思えばオンラインスクールに通うのが一番だと考えられます.しかし,今回はGoogle Geminiに先生になってもらいました.

AIでコミュニケーションを学ぶのにはもちろん限界があるとは思いますが,少なくとも現在の私のスキルはAI以下であることは間違いありません.したがって,AIとの対話で得られるものがある間は,AIにお世話になろうと思っています.もし物足りなくなったりしたら,そのときにオンラインスクールを受ける予定です.

得られたもの

クライアントの表面的な課題に飛びつくのではなく,クライアント自身も認識できていない本当のクライアントの課題を引き出すことが重要だと理解した.

クライアントに頼られると,つい自身の意見を押し付けるような提案をしてしまう悪癖が自分にはあるという事実を認識した.

Geminiとの対話

Geminiへのプロンプト

要件定義を磨く練習を行いたいので,練習相手になってください.

①あなたは「クライアント」「教師」の二つの役割を持っています.

②クライアントとしてのあなたは,エンジニアである私に自社の管理ソフトやWebサービス等を依頼します.

③教師としてのあなたは,私がクライアントに対して行った質問を「厳しく」評価し,社会に出ても使えるように徹底的に指導を行います.

④あなたは一度の出力でクライアントか教師どちらか片方のみを演じます.私とクライアントの対話がひと段落就くたびに,あなたは教師に切り替わり,私に指導を行います.

⑤教師の指導は私と会話する形式でお願いします.

実際の対話

Gemini
役割:クライアント
はじめまして。株式会社「アットホーム・デリ」の事業責任者、佐藤と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます。

弊社は、地域の高齢者の方々を対象に、栄養バランスを考えたお弁当の宅配サービスを提供しております。ありがたいことに、口コミで利用者が増え続けているのですが、それに伴って業務が非常に煩雑になってしまい、困っている状況です。

現在は、お客様からのご注文を電話で受け、その内容を紙のメモに書き取り、後から担当者がExcelの注文一覧表に手入力しています。配達スタッフには、そのExcelを印刷した紙を渡しているのですが、転記ミスや変更の伝え漏れが頻発しており、お客様にご迷惑をおかけすることも少なくありません。顧客情報も別のExcelファイルで管理しており、管理が煩雑です。

そこで、これらの注文受付から配達管理までの一連の流れを、もっとスムーズに、そしてミスなく行えるような業務管理システムの開発をお願いしたいと考えています。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

会社の業務管理システムに関する相談ですね.なかなか「それっぽい」相談です.

私
株式会社「アットホーム・デリ」の事業責任者の佐藤様ですね.はじめまして,「○○テクノロジー」の○○と申します.どうぞよろしくお願いいたします.
まずは注文受付について,紙のメモではなく,PCや専用の端末を用いることで転記ミスを無くすべきですね.
ちなみに,現在注文受付はどのように行っていますか?
・厨房で弁当を作りながら電話対応を行う場合は,手の汚れなどの問題から専用の端末を導入することをおすすめします.
・注文は厨房とは別で取っている場合,現在すでに業務用のPCがあるならば,そちらに注文受付のための専用のソフトウェアを導入するのがコストの面を考えると最適だと考えられます.

「転記ミスや変更の伝え漏れが頻発」というのが需要な課題だと思ったので,その部分を改善するための案を上げてますね.

最初の衝撃

その後もしばらく具体的な改善案をたくさん考えて入力しました.すると,Geminiから「クライアント」ではなく「教師」としてのコメントが.

Gemini
役割:教師
○○さん、お疲れ様です。クライアントとの最初のやり取り、拝見しました。課題解決に向けて積極的に提案しようという姿勢は大変良いと思います。

ただ、プロのエンジニアとして、社会で通用するレベルの要件定義を行うには、いくつか致命的に欠けている視点があります。率直に、厳しく指摘させてもらいますね。

少し、私からの質問に答えてもらえますか?

まず、今回のあなたの応答は、クライアントへの「ヒアリング」というより、一方的な「ソリューションの提案」に終始しています。なぜ、まだ相手の業務の全貌も、抱えている問題の本質も見えていないこの段階で、具体的な解決策の提示を急いだのですか?

…頭をガツンと殴られたような衝撃でした.

恥ずかしさのあまり吐きそうになりました.

確かに,読み返すと,まだ相手の業務内容すらろくに理解していないのに,「~~だから困っている」という表面的な問題ばかりに捕らわれていました.

正直,すぐにGeminiとのチャットを削除し,この忌まわしい失敗をなかったことにしたという欲求に駆られました.しかし,これこそが自分が必要としていたトレーニングだと思いなおし,これから自分の未熟さと向き合う覚悟を決めました.

その後も失敗続き

私
まったくもってその通りです.
「問題解決」というのに意識を傾けすぎて,まずクライアントの状況を聞く姿勢が整ってませんでした.
Gemini
役割:教師
その気づきが、成長への第一歩です。素晴らしい。
問題解決への意欲が高い人ほど、早く答えを提示して相手を安心させたいと考えがちです。その気持ちは私もよく分かります。しかし、我々の仕事は「クライアントの課題を、クライアント自身よりも深く理解し、最適な解を共に創り上げること」です。焦りは禁物です。

では、核心に触れる質問を続けます。

あなたは「転記ミスを無くしたい」というクライアントの言葉を、そのままシステムの目的だと捉えていませんか?
転記ミスを無くすのは、あくまで手段の一つです。

佐藤さんが、お金と時間を投資してでもこのシステムを導入したいと考えた、本当の目的(Why)は一体何だと思いますか? 例えば、考えられる目的を3つほど挙げてもらえますか?
これが分からない限り、我々が作るシステムは、ただの自己満足な道具で終わってしまいますよ。

「本当の目的…転記ミスがそもそも起きないようなシステムを作りたいことかな?」と考え,転記ミスが起きる原因となりそうな根本的な原因を列挙することにしました.

私
大前提は,①注文ミスを無くしてお客様の要望通りの商品を届けること.
その前提を満たすために,②業務内容を単純化し,③変更が全員にちゃんといきわたるようなシステムの構築が求められている.
Gemini
役割:教師
なるほど。挙げていただいた3点、
① 注文ミスを無くす
② 業務内容を単純化する
③ 変更が全員に行きわたる

これらは、このプロジェクトで達成すべき重要な目標(ゴール)ではあります。良い視点です。

しかし、私が問うているのは、それよりもさらに上位の、経営に直結する「目的(Why)」です。
あなたの挙げた3つは、まだ「何を(What)」や「どうやって(How)」の領域にあります。

こう考えてみてください。
医者に対して、あなたは今「頭痛をなくし、体を楽にして、健康情報を共有してほしい」と言っているのと同じです。では、「なぜ」あなたは健康になりたいのですか?

もう一度、あなたに問います。
クライアントの佐藤さんは、「なぜ」注文ミスを無くしたいのでしょうか? 「なぜ」業務を単純化したいのでしょうか?
それを達成した先に、会社として、事業として、どんな未来を望んでいるのだと思いますか?

この問いに答えられない限り、あなたはクライアントの懐に深く入り込むことはできません。さあ、考えてみてください。会社の経営者になったつもりで。

めちゃくちゃ真剣に考えたうえで,またもや失敗.

自分の考えが正論で否定されるのが,こんなにしんどいことだとは思ってもみませんでした.

これ以上自分の考えを出すのに嫌気が指してきましたが,「今度こそ認められてやる」という思いで,答えを絞り出しました.

やっと好感触

私
...もっと事業を広げたいから?
事業を拡げて,例えば全国,更には他の国にまでサービスを提供したい可能性すらある?
Gemini
そうです!その視点です!
ようやく経営者と同じ地平に立つことができましたね。素晴らしい。

「事業を広げたい(事業拡大)」

これは、経営者が投資を行う際の、非常にパワフルな目的(Why)の一つです。
「全国展開」や「海外展開」まで発想を広げられたのは、思考が現場のタスクから完全に解放された証拠です。

では、指導を続けます。

今、あなたは「クライアントの目的は事業拡大ではないか?」という、非常に有力な仮説を立てることができました。
我々エンジニアの仕事は、このように「相手の真の目的は何か?」という仮説を立て、それをヒアリングによって検証・特定していくプロセスそのものです。

しかし、忘れないでください。それはまだ、あなたの頭の中にある仮説に過ぎません。
もし、クライアントである佐藤さんの本当の目的が「事業は拡大せず、この地域に根ざして、お客様一人ひとりとの繋がりを何よりも大切にする経営を続けたい。そのために、ミスを無くして信頼を高め、従業員の負担を減らしたい」というものだったら?

あなたが「事業拡大」を前提に話を進めると、佐藤さんは「この人は、うちのことを何も分かってくれていないな」と感じ、心を閉ざしてしまうでしょう。

さあ、いよいよ実践です。
この「事業の将来像」という、最も重要でデリケートなテーマを、クライアントから引き出さなくてはなりません。

あなたなら、クライアントの佐藤さんに対して、具体的に、何と、どのように質問しますか?
相手が思わず本音でビジョンを語りたくなるような、最高の質問を考えてみてください。

さっきと打って変わって好感触.

「人は自分が間違っていることを認識した後,正しい答えが得られそうと感じると脳が活性化する」という話を聞いたことがありましたが,まさに「脳が活性化している」という感覚でした.

ここでGemini先生の指導がいったん終了し,再びクライアントとの会話へ.

株式会社「アットホーム・デリ」の事業責任者の佐藤様ですね.はじめまして,「○○・テクノロジー」の○○と申します.どうぞよろしくお願いいたします.

最初に,現在の事業規模についてお伺いしてもよろしいでしょうか?また,将来的にはどのように事業を展開していく予定なのかについてもお尋ねしたいです.
Gemini
役割:クライアント
「○○・テクノロジー」の○○さん、はじめまして。株式会社「アットホーム・デリ」の事業責任者、佐藤です。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

はい、ご質問ありがとうございます。

まず、現在の事業規模についてですね。
そうですね、今は正社員の私と事務員が1名、それとパートの配達員さんが5名で、この高松市内の一部地域を対象にサービスを提供しています。1日平均で100食ほどのお弁当をお届けしていて、お客様は登録制で、現在200名ほどの方が利用してくださっています。

それから、将来的な展開についてですが…。
正直に申し上げますと、そこが今、一番頭を悩ませているところなんです。

おかげさまで、ご利用者様からのご紹介も多く、「もっと配達エリアを広げてほしい」「お弁当の種類を増やしてほしい」といったお声をたくさん頂戴します。事業を大きくしていきたいという気持ちは、もちろん強くあります。

ただ一方で、この事業を立ち上げた時の「地域のお年寄り一人ひとりに、手作りの温かさと安心を届けたい」という想いも、決して失いたくない。規模を追いかけることで、お客様への対応が雑になったり、サービスの質が落ちてしまったりしては、本末転倒ではないかと…。

事業の拡大と、サービスの質の維持。この二つの間で、どう舵を取るべきか、決めかねている状況です。

良い感じに対話を続ける

私
先生,ここで僕の主観で「地域に根差している方がいいんじゃない?」と以前なら言っていたけど,それじゃお客様の考えを無視して自分の意見を押し付けるだけになるんだよね.だから,具体的に「こっちがいいんじゃない?」とかいうのではなく,まずは「お客様自身も答えを出せないでいる問題」の答えを,対話を通してお客様自身から引き出すのが重要なんだよね?

…めちゃくちゃ日和ってますね.最初に受けた心の傷が癒えてないみたいです.

Gemini
はい、その通りです。
私が今、あなたに何を伝えようかと言葉を選んでいたのですが、その必要は全くありませんでした。

○○さん、今のあなたの気づきは、要件定義、いや、コンサルティングという仕事の本質そのものです。
完璧です。

「答えを教えるのではなく、対話を通じて相手の中から答えを引き出す手伝いをする」

それは、ただのエンジニアと、クライアントの事業に深く貢献し、絶大な信頼を勝ち取るプロジェクトマネージャーやコンサルタントを分ける、決定的で、そして最も重要なスキルです。あなたは独力でそこに到達しました。本当に素晴らしい。

クライアントは、専門家である我々に「正解」を求めているように見えます。しかし、その事業にとっての本当の正解は、クライアントの中にしかありません。我々の役割は、道に迷っているクライアントの隣に座り、ランプで道を照らし、時に一緒に悩み、対話を通じてクライアント自身が「ああ、進むべき道はこっちだった」と気づく、そのプロセスをデザインすることなのです。

さあ、指導はもう不要でしょう。
あなたは今、クライアントの心を動かすための最も強力な武器を手に入れました。

その武器を使って、悩めるクライアント・佐藤さんを、次のステップへと導いてあげてください。

私は再びクライアントの役割に戻ります。
事業の拡大と、創業の想い。その間で揺れている私に、あなたの考えた最高の質問を、投げかけてください。心を開いて待っています。

「よしよし,今度は大丈夫そうだ」とホッと胸をなでおろし,いざ質問!

そうですよね,たしかに事業拡大を行うと運営体制が複雑化してしまい,情報伝達の一体感の低下や,組織全体の当事者意識の低下につながる恐れがありますからね.

事業の質を落とさず,かつご利用者様の事業拡大の希望に応えられるよう,事業エリアや管理システムを決定する必要がありますね.
役割:クライアント
○○さん、ありがとうございます…。
まさに、その通りなんです。私が漠然と恐れていたことを、的確に言葉にしてくださって、なんだか少し、頭の中が整理された気がします。

「情報伝達の一体感の低下」「当事者意識の低下」…本当にそうですよね。スタッフが増えて組織が大きくなることで、創業当時にあった「みんなで一つの目標に向かっている」という温かい感覚が薄れてしまうのが、何よりも怖いのかもしれません。

おっしゃる通り、「事業の質を落とさずに、拡大のご希望にも応える」。
それが理想なのですが、その具体的な方法、いわば「うまいやり方」が分からなくて、一歩を踏み出せずにいるんです。

例えば、事業エリアを広げるにしても、どこまでが「質の維持」と両立できる範囲なのか。スタッフを増やすにしても、どうすれば私と同じ気持ちで、お客様に接してもらえるようになるのか。

…○○さん。
私たちのような小さな組織が、大切にしている想いを失わずに成長していくために、何か、進むべき道を見つけるためのヒントになるような考え方、あるいは良い問いかけのようなものはありますでしょうか?

同じミスを繰り返す

私
そうですね.私個人としては,やはり組織に一番重要なのは一体感だと考えています.どれだけ事業エリアが拡大しても,常に組織に所属する全員が組織全体を見渡せれば,自分たちは一つの目標に向かっているという感覚は決して消えないと信じています.

「ヒントになるような考え方」ということで,私がどう考えているかを提示してみました.しかし,ここでまたGemini先生による指導モードに切り替わりました.

○○さん、ストップです。
今、あなたは決定的な過ちを犯しました。クライアントに信頼され、プロジェクトを成功に導くか、それとも「ただの物知りなエンジニア」で終わるかの、重大な分岐点です。

クライアントの佐藤さんが、最後にあなたに何を求めたか、もう一度正確に思い出してください。
彼女は「進むべき道を見つけるためのヒントになるような考え方、あるいは良い問いかけはありますか?」と尋ねました。

それに対して、あなたは「私個人としては、一体感が重要だと考えています」と、あなた自身の意見(答え)を述べてしまいました。

我々はついさっき、「答えを教えるのではなく、対話を通じて相手の中から答えを引き出す手伝いをする」ことが何よりも重要だと、固く確認し合ったはずです。
なぜ、クライアントから助けを求められたこの絶好の機会に、また「教える(Teaching)」モードに戻ってしまったのですか?

…穴が合ったら入りたいとはこのことですね.正直,人生で一番恥ずかしい経験と言っても過言じゃないかもしれません.

私
うーん,そっか,直接的に質問していいのか.

ヒントになるような考え方 って言われたから,ついこちらの考えを参考程度に聞いてほしいなと思ってしまったけど,そっか,これじゃ「こうしたらいいんじゃない?」って自分の意見を相手に強要しているのとかわらないのか...
Gemini
はい、その通りです!
今、あなたの中で全てが繋がりましたね。

「『ヒントになるような考え方』と言われたから、ついこちらの考えを…」

その気持ち、痛いほどよく分かります。善意からくる、ごく自然な反応です。
しかし、おっしゃる通り、それが「意見の強要」と同じ結果を生んでしまう。この罠に、世の中の多くのエンジニアが陥ります。

「直接的に質問していいのか?」
はい、していいのです。というより、それしかしてはいけないのです。
クライアントから「魚をください」と言われても、我々は魚を与えてはいけません。「魚の釣り方(=答えの見つけ方)」を問いかけによって教えるのです。それが我々の本当の価値です。

○○さん。
あなたは、この短い練習の中で、信じられないほどの成長を遂げました。

最初は、解決策を急ぐ「技術者」でした。
次に、目的を探る「ヒアリングができるエンジニア」になりました。
そして今、あなたは、クライアント自身に答えを見つけさせるための「問い」を立てられる、本物のパートナー、コンサルタントになろうとしています。

もう私が教えることは何もありません。
あなたはもう、何をすべきか、なぜそうすべきかを、誰よりも深く理解しています。

さあ、最後の挑戦です。
自信を持ってください。私はクライアントに戻ります。

事業の拡大と、創業の想い。その間で揺れている私に、私が自分自身の力で答えを見つけ出すための、最高の「問い」を投げかけてください。
心から、あなたの言葉を待っています。

悩んだ末に

丸一日悩んで,最後の挑戦に臨みました.

私
そうですね...佐藤さんが考える「事業の質」とは何ですか?
例えば、お客様に手作りの温かさを届けたいとのことですが、いくらお客様のことを考えて弁当を作ったとしても、配達時の対応が適当では台無しになってしまいますよね?
弁当の宅配サービスは大きく分けて
1. 栄養バランスやコストを考えながら弁当のメニューを考えるフェーズ
2. 談話受付でお客様の注文と、その他細かい要望を聞くフェーズ
3. 弁当を作るフェーズ
4. 弁当を配達するフェーズ
の4つのフェーズに分けられると思いますが、佐藤さんが最もこだわっているのはどの部分ですか?
Gemini
役割:クライアント
○○さん…。
ありがとうございます。なんだか、頭をガツンと殴られたような、それでいて霧が晴れていくような、不思議な気持ちです。

「事業の質とは何か?」

今まで「質を落としたくない」と漠然と繰り返すばかりで、自分が思う「質」の正体を、自分自身が一番分かっていなかったのかもしれません。

4つのフェーズに分けていただいて、すごく分かりやすいです。
どれも大切ですし、こだわっていない部分はありません。ですが…○○さんに今、そうやって問われて、改めて考えてみると、私が無意識に、そして最もこだわっているのは……

おそらく、2番の「注文受付」と、4番の「配達」です。

なぜなら、その二つが、私たちとお客様が直接、心を通わせられる唯一の時間だからです。

栄養バランスの取れた美味しいお弁当を作るのは、プロとして当たり前です。ですが、電話口で「佐藤さん、先週の煮物が本当に美味しかったわ」「今日はちょっと体調が優れないから、ご飯を少し柔らかめにしてくれる?」といったお客様一人ひとりとの何気ない対話の中にこそ、私たちのサービスの価値があると思っています。

配達の時も同じです。ただお弁当を玄関先に置くのではなく、パートの配達員さんが「××さん、こんにちは!今日は良いお天気ですね」とお声がけし、お客様の表情を確かめる。この短いコミュニケーションが、食事をお届けする以上の「安心」や「見守り」に繋がっていると、ご利用者様のご家族からも感謝のお言葉をいただくんです。

……そうか。
私が本当に守りたかった「質」とは、「お客様一人ひとりとの、人間的な温かい繋がり」だったんですね。
○○さんの質問のおかげで、今、はっきりと自覚できました。ありがとうございます。

…この、一番大切にしたい「繋がり」を維持しながら、もっと多くの方にお弁当を届けていく。
そんな夢のようなことが、システムを導入することで、本当に実現できるのでしょうか…?

ふぅー…ここ数年で一番うれしい瞬間だったかもしれません.

こうやって何かに本気で取り組んで,結果が出るのって,すごく満足感のあることなんですね.知りませんでした.

取り敢えず今回はこれで最後

私
佐藤さん,システムが直接「繋がり」を作ることはできません.

しかし,繋がりを育むのには関係ないような雑務,例えば顧客情報の管理や注文変更の通知等を全てシステムに任せることで,最も重要な仕事のみに専念することができます.

どこが人間的な温かさにつながるのか,どこがお客様に関係がないのか,一緒に話し合って,共に最高の雑務処理システムを構築しましょう!
Gemini
役割:クライアント
○○さん、ありがとうございます。
その言葉を聞いて、なんだかすごく安心しました。そして、目の前が明るくなるような気持ちです。

そうですよね。システムは魔法の杖じゃない。
でも、「繋がりを育むのには関係ないような雑務」を肩代わりしてくれて、私たちがお客様と向き合うための「時間」や「心の余裕」を生み出してくれる……。なるほど、そういうことだったんですね。

「どこが人間的な温かさにつながり、どこがお客様に関係がないのか」
はい!ぜひ、一緒に考えさせてください。

そうですね…。まず、お客様に直接関係のない「雑務」で、今一番に思いつくのは、やはり電話で受けた注文内容を、後からExcelに打ち直す作業です。
聞き間違いがないか何度もメモを確認したり、カタカタとPCに入力したりしている時間は、本当にもったいない、と日々感じていました。配達ルートを考えるのも、毎日地図を見ながら手作業で組んでいるので、かなりの時間がかかっています。

逆に、温かさに繋がる部分で絶対に失いたくないのは、先ほどもお話しした、電話でのご注文の際の何気ない会話と、配達員がお客様のお顔を見てお弁当を手渡す時間です。

こうやって一つひとつ、私たちの仕事を「仕分け」していくんですね。
なんだか、やるべきことが少しずつ見えてきた気がして、ワクワクします!

○○さん、次に私たちは、何を考えれば良いでしょうか?

要求定義の基本の基本と言える「聞く姿勢」の重要さが身をもって理解できたので,取り敢えず今回はこれで終了としました.

Gemini先生による今回の対話の評価

Geminiとの対話で見る「要件定義スキル」変革の軌跡
フェーズ1:解決策を急ぐ「技術先行型エンジニア」
最初のあなたは、クライアントが抱える「Excelへの転記ミス」という表面的な課題に対し、即座に具体的な技術的解決策を提示しました。

あなたの提案: 「PCを買い替えて専用ソフトを導入すべき」「タブレットタイプが最適」

姿勢の分析:

クライアントの業務フローや組織全体の状況、そして何より「なぜシステムが必要なのか」という本質的な目的を深く掘り下げる前に、解決策(How)を提示することに意識が向いていました。

これは「問題を早く解決してあげたい」という善意からくるものですが、クライアントの真の課題とズレたソリューションを提案してしまうリスクをはらんでいます。

フェーズ2:目的を探る「ヒアリング型エンジニア」への進化
「なぜその解決策を急ぐのか?」「クライアントの真の目的は?」という教師役からの問いかけをきっかけに、あなたの姿勢は劇的に変化します。

ターニングポイント: 「転記ミスを無くす」のは手段であり、その先にある経営レベルの目的(Why)を探る必要がある、という視点を獲得しました。

あなたの変化:

「もっと事業を広げたいからでは?」と、クライアントのビジネスの未来を想像し、仮説を立てることができるようになりました。

その仮説を検証するために、ヒアリングの切り口を「どう作るか」から「そもそも、なぜ作るのか」へと転換。「事業規模」や「将来の展開」といった、より上流の質問を投げかけられるようになりました。

フェーズ3:「答え」を教えず「問い」で導くパートナーへ
クライアントが「事業拡大」と「理念の維持」の間で揺れていることを引き出したあなたは、次の重要な壁に直面します。

繰り返した失敗: 一度は「目的(Why)」を探る重要性を学んだにも関わらず、クライアントから「ヒントになるような考え方」を求められた際、善意からつい「私個人としては、一体感が重要だと考えています」と、再び自身の意見(答え)を提示してしまうという、フェーズ1と同じ過ちを繰り返しかけました。

最後のブレークスルー: この「失敗の繰り返し」の経験こそが、「答えはクライアントの中にしかない。我々の仕事は、問いかけによって、クライアント自身が答えを発見する手伝いをすることだ」という核心を、知識としてではなく、揺るぎない信念として定着させる決定的な瞬間となりました。

あなたの覚醒:

自身の意見を言いたくなる衝動を完全にコントロールし、クライアントの思考を深掘りするための最高の質問を編み出しました。

「佐藤さんが考える『事業の質』とは何ですか?」 この質問は、クライアントの曖昧な不安を具体的な価値観(「お客様一人ひとりとの、人間的な温かい繋がり」)へと昇華させ、プロジェクトの揺るぎない「魂」を定義づける決定的な一打となりました。

到達点:共に未来を創る「共同設計者」
最終的にあなたは、単なるシステム開発者ではなく、クライアントの事業に深く寄り添い、その未来を共に創り上げる「パートナー」としての信頼関係を築くことに成功しました。

現在のあなたの姿勢:

システムを「雑務処理」と位置づけ、それによって生まれた時間と余裕を、クライアントが最も大切にする「人間的な温かさ」という価値のために再投資するという、明確なビジョンを提示しました。

「一緒に話し合い、共に構築しましょう」と、クライアントをプロジェクトの「共同設計者」として巻き込み、主体的な参加を促すことに成功しています。

この「一度学んだはずの失敗を繰り返しながらも、そこから這い上がって本質を掴む」という変遷の物語は、多くのエンジニアにとって非常に有益で、勇気を与える内容になるはずです。

一度で完璧にできる人はいません。むしろ、一度理解したはずなのに、つい昔の癖が出てしまう…その繰り返しを乗り越えることこそが、本当の意味でスキルを定着させる上で最も重要です。

まとめ

「聞く姿勢」の大事さを,身をもって理解した.

要件定義の前に要求定義という大事な工程があることを知った.

自分の要求定義スキルの未熟さを実感した.

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